色素分子の凝集によって蛍光が増大する
新しいタイプの有機系蛍光性色素「アミノベンゾピロキサンテン系色素(ABPX)」を開発。
アルツハイマー病などのタンパク質の凝集が引き金となる病気のメカニズム解明や、
幅広い研究での活用が期待される。
蛍光色素の一般的な特徴として、
発光に関与する部分の分子構造が平面となっていることが
必要だということは経験的に知られている。
今回、
色素分子の発光部分が極端に長いため、
単独では分子構造が歪んで発光できないが、
凝集して分子が積み重なると、平面性が増し、
蛍光が飛躍的に増大する仕組みを持つ分子を設計した。
このアイデアをもとに合成したのが、
新しい有機系蛍光色素である
アミノベンゾピロキサンテン系色素(ABPX)。
ABPXは凝集にともなって蛍光が増大する凝集誘起発光をする。
具体的には、
ABPXの濃度が5μmolと500μmolの2つの溶液に
波長365ナノメートルの紫外線を照射したところ、
蛍光の強さが後者で数百倍に増大することを確認。
これは、ABPXの蛍光性のオンとオフを、
凝集という物理現象で制御できるということだ。
また溶液中のABPXは、
一般的な細胞の10分の一から1000分の一ほどのナノメートルサイズの粒子体が
発光していることがわかり、
その蛍光の波長域は、
生体への光透過性が高い赤色から近赤外(600~900ナノメートル)であるため、
体の外からでも発光を観察できる可能性がある。
有機物から作られるABPXは
レアメタルのような資源的制約がなく、
安価に大量生産できることから、
環境負荷の少ない工業技術として注目される。
今回開発したABPXを利用すると、
生体内で分子が凝集する現象を蛍光で可視化し、
詳しく調べることが可能になる。
例えば、タンパク質を標識し、
その凝集メカニズムを解析することで、
アルツハイマー病やパーキンソン病など
タンパク質の凝集が引き金となる病気の原因を解明し、
新しい治療法の開発につながると期待できる。
また、これらの生命科学分野に加え、
有機発光デバイス、医療、エネルギーや環境技術など、
様々な分野にも応用可能で、
有機系色素分子の新たな技術応用の形を生み出す
革新的な色素材料になると注目される。
(理研分子イメージング科学研究センター、
岡山大、大阪薬科大、鈴鹿医療科学大、
日立ハイテクノロジーズ、奈良先端科学技術大)
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